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なぜ政府は「みどり戦略」を推進するのか?
政府が進める「みどりの食料システム戦略」は、環境負荷の少ない農業への転換を目指し、特に有機農業の拡大を大きな柱としています。この背景には、環境問題への対応、食料の安定供給、そして国際競争力の強化という3つの要因があります。
環境負荷の低減を目指す日本農業
現在、日本の農業では化学肥料や農薬が広く使用されています。しかし、長期的にはこれが環境へ与える影響が懸念されています。農林水産省によると、日本の農業は年間に約40万トンの化学肥料と約10万トンの農薬を使用しており、これらは土壌や水質への影響を及ぼし、生態系のバランスを崩す可能性があるとされています。
こうした環境問題に対応するため、「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに化学農薬の使用量を50%削減し、化学肥料の使用量を30%削減する目標を掲げています。また、これと並行して有機農業の面積を現在の1%未満から、2050年までに25%に拡大する方針を示しています。
国際市場での競争力向上も狙い
有機農業の推進には、国際市場での競争力を高める狙いもあります。世界では、有機食品の需要が年々拡大しており、特にEUやアメリカでは、有機食品市場が急成長しています。
- EUでは有機農業の面積が9.1%(2020年時点)
- フランスやドイツでは10%以上に拡大
- アメリカのオーガニック市場は600億ドル(約8.8兆円)規模に成長
一方、日本の有機農業の割合はわずか0.6%で、国際基準に比べて大きく遅れています。特に、輸出を重視する日本にとっては、「有機認証」がないと海外市場で競争できないという課題があります。
有機農業の課題と政府の対応
しかし、有機農業の拡大には課題も多いです。
1. コストの高さ
化学肥料や農薬を使わない有機農業は、雑草・害虫対策に手間がかかるため、生産コストが高くなる傾向があります。
2. 収量の不安定さ
有機栽培では、化学肥料を使わないため、天候の影響を受けやすく、安定した収穫量を確保しづらいという問題があります。
3. 流通の課題
有機農産物の販路はまだ限られており、一般のスーパーでの取り扱いも少ないです。消費者の認知度も低いため、需要と供給のバランスが取りづらい状況です。
こうした課題に対応するため、政府は以下のような支援策を打ち出しています。
- 有機農業への補助金拡充(化学農薬・肥料を減らす農家への支援)
- スマート農業の導入(AI・ロボットによる雑草・害虫管理の効率化)
- 流通網の整備(有機農産物の販売促進や輸出強化)
政府はこれらの施策を通じて、「環境にやさしく、儲かる農業」を実現することを目指しています。
「みどり戦略」は日本農業をどう変えるのか
日本の農業は、高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加といった課題に直面しています。
- 農業従事者の平均年齢は67歳(2023年時点)
- 農地の荒廃(耕作放棄地)が増加
こうした現状を打破するためにも、持続可能な農業への転換は避けられません。
世界の農業がオーガニック志向へと向かう中、日本の農業はどのように変わっていくのか。今後の動向が注目されます。
(参考: 農林水産省)